誓い   wrote:綾 翔

ぼくらの日々は、こんな風に過ぎていく。


週末、梅雨空の中から久々に太陽が姿を現した。
そろそろ季節も少しずつ夏に移動しようかという、そんな日の夕暮れ。
真田一馬と郭英士は人通りの少ない舗道を歩いていた。
二人は徐々に紅く染まっていく町並みを横目で見ながら、他愛ない会話を繰り返す。
それは恋人同士特有の甘い雰囲気にも似ていた。
「もう期末一週間前なんだよなー…」
少し溜息混じりに一馬が洩らす。英士は少し笑って答えた。
「でも一馬は大丈夫でしょ?苦手なトコとか有る?」
「ん…特には無いけど。でもなぁ…ちょっと数学が」
苦笑のようなものを浮かべて一馬は歩く。
時々二人でふらりと小さな店に入っては出る、の繰り返しだった。
何事も穏やかに過ぎていく日。それが休日というものだ。
「今度英士のトコ行ってもいい?ちょっとだけ教えて欲しいんだけど…」
「いいよ。その辺りなら俺、得意だしね」
二人は小さく声を上げて笑いあう。

『想い』だけ、溢れかえって。
君を、壊してしまいそうになる。
こんな余裕のない僕を、君が包んでくれる。
君を包める手を僕に下さい、カミサマ      


ふと駅構内の時計を見上げると午後7時を回っていた。
英士と一馬は丁度来た電車に急いで乗り込む。
楽しい時間ほど早く過ぎる、とはよく言うものだ。
電車は二人を乗せて不規則に振動を伝えてくる。
狭い二人がけの席に座り、どちらからともなく手を握っていた。
ほんの少しの時間でも一緒にいたい、と英士は思った。
他人が思うよりも英士は物事に執着しないタイプだ。
取り立てて執着しているといえばサッカ−のみ。
他のことに対しては何処かおざなりになっている事が多い。
だが、目の前の存在に対しては。少し幼い、暖かな存在に対してだけは。
「あ…じゃあな、英士。また今度」
英士の手から一馬のぬくもりが離れていく。
駅の向こう側に消えていく後ろ姿を英士は暫く目で追っていた。
一馬の姿が見えなくなっても、暫く見つめていた。
隣にいた存在が消え、英士は握られていた右手を見つめる。
確かに数秒前までは有った、心地よい温もりを。

交わした言葉なんて、覚えてなくていいよ。
ただ、君の記憶に残ればいい。
今もずっと先も『永遠』なんて存在しないけれど


「え…いし…ッ!やだ…ァ…」
ベッドが二人分の体重を受けて軋む。
触れる肌は英士の残した紅い痣で所々色づいている。
滴る汗がシ−ツにこぼれ、英士は一馬の口唇にキスを落とした。
一馬は駄々をこねる子どものように首を微かに振る。
人差し指と中指で其処を刺激すると白濁した液が指に絡みついた。
「一馬…可愛いよ」
「ッ…そ…ンな…触るなよっ…汚い…だろ…」
息も切れ切れに答えてくる一馬に英士は軽く微笑んだ。
愛おしくて堪らない、と言いたげな笑みを。
「大丈夫。一馬のは汚くないよ」
滲み出てきた液を舌で絡め取る。一馬の体が反応を返す。
紅潮しきったその表情を英士は愛おしそうに眺めた。
一馬の潤んだ瞳から数滴の涙がこぼれ落ちる。それも舌で舐めた。
「英士…もぅ…俺…!!」
「…どうして欲しいか言ってよ、一馬」
意地悪く微笑んで英士は一馬の耳元に囁きを落とした。

それでも  イツカ  手は、離レテシマウ。
好きだよ、と  言った言葉も  消エテシマウ。


「大丈夫か?一馬」
「…そんなに弱って見えてんの?俺」
結人に訊かれ、一馬は力無く問い返す。
英士の家に泊まった翌日、練習があったのをすっかり忘れていた。
「一馬。首の辺り、隠した方が良いんじゃねぇ?」
言われて一馬は慌てて首の辺りを押さえる。
が、結人は得たり、といった顔で笑った。
「やっぱりな〜…昨日英士のトコ泊まってたんだろ?」
問い返され、否定できずに頷く。
両肩を大げさにすくめて「やれやれ」と結人は呟く。
「英士ぃ。あんまし一馬いじめちゃだめだろ〜?」
「何言ってんの。俺は一馬を愛してるんだよ」
英士もやってきて会話がそっち方向に移動していく。
さらりと言われた台詞に思わず一馬は紅くなった。
「なっ…なっ!?何言ってんだよ英士!!」
「お熱いね〜二人とも」
結人に呆れ半分のヤジを投げられ、一馬は英士にくってかかる。
だが、そんな事をものともせず英士は続けて言う。
「俺は一馬のこと、愛してるよ」
馬鹿につける薬は無いとよく言うが。まさしくその通りである。
その場で固まってしまった一馬を余所に、英士と結人は雑談を始めていた。

他愛ない約束をしたよ、君との。
気持ちは変わらないと誓った。
誰よりも好きだと。
永遠を願いそうに    なった。


「…一馬」
「一緒にいよう。いつまで経っても、俺達が離れても」
返答はない。英士は続ける。
「俺の気持ちは変わらないよ。…ねぇ、一馬」
途中で言葉は途切れてしまった。
前を歩いていた一馬が急に振り返り、英士に抱きついた。
人通りも無く小さな狭い路地裏では下手に動けない。
英士が優しく腕を回すと一馬が微かに顔を上げた。
「…俺は…時々不安になる。ずっと居られないんじゃないか、って。
 だから、きっと…英士の声が欲しいんだ」
消えそうに小さな声で呟かれる一馬の声に、英士は耳を澄まして聞き入る。
「約束が…欲しい。俺達は変わっても離れないって…信じたい」
「…うん。どんなに時間が経っても、俺達は…」
柔らかい温もりが英士の唇に触れた。縋るような目にぶつかる。
一馬の手に力が入り、抱き返す力が少し強くなった、ような気がした。
背中に回した腕を英士は一馬の頭ごと胸に抱き込む。
雨は止む事を知らず、強く激しく二人の頭上に降り注いでいた。

でも  ねぇ、カミサマ。
いるんなら聴いて下さい。
たった二人の  小さな願いを。


〜END〜   2002/07/01(Mon)



HappyBirthday鳴海さんvvようやく17ですね〜(^^)
こんなモノですみませんが…どうか受け取ってあげて下さい。


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翔さんからこんなにすんばらしい郭真小説頂いちゃいましたよ!
キャー!もう素敵すぎる…!郭真だよ!?どうしよう…!
この二人は何というか、将来を誓い合うような仲であって欲しいです。
英士は一馬に手を出したら死ぬまで責任を取るべきです(笑)
えへへ、最近めっきりエロから離れてる君なのに、
私の為にエロ入れてくれてありがとう…★
あ、小説の雰囲気ぶち壊すから、私のコメントなんぞ
ない方が良かったのでしょうか…すいません;m(__)m


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